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あなたが真っ先に思い出すのは,楽しかったこと? それとも...

たつみ

もう随分昔の事ですが、友人と50cc2台で日帰りツーリングに行った時の事です。
南アルプス近くの標高1100mの峠にさしかかった所で友人のDT50がパンク。修理キットなど持っておらず、民家さえ無い山の中で途方に暮れてしまいました。

そこは午後になると霧に包まれ気温もぐっと下がり車も殆ど通りません。携帯電話など存在しない頃だったので自力で何とかするしかないという事で二人で知恵をしぼりました。

その時、バイク雑誌でパンクの応急処置法に、「タイヤの中に草を詰めるとよい」という記事を読んだのを思い出し、早速車載工具でリヤホイールを何とか取り外し、チューブを抜いてその辺に生えている雑草を片っ端から引っこ抜いてタイヤに詰めました。
タイヤが膨れるほど草を詰めるのは大変な作業で、両手を傷だらけにして草を抜きまくりました。午後になり霧が出始めた頃、ようやくタイヤが草でいっぱいになり、同時に辺りは焼け野原の様になりました。

さあ出発だとエンジンをかけ、注意深く発進。おお、なかなかいいではないか。僕は友人の後に付きタイヤの状態を観察し続けました。しかし、悲しい現実はわずか数分後にやってきました。

彼のタイヤから何やらボロボロと飛んできます。その内、40km/hで快調に走っていたのが20km/h以下まで落ち込んで、ついに彼が悲鳴をあげました。
「これじゃあ2000cc単気筒に乗っているみたいだ」タイヤを見ると、あんなに苦労して詰めた草が摩擦で茹で上がり、湯気を立ちのぼらせて1箇所へコブ状にまとまっていました。

それからまた草むしりの始まり。30分詰めて5分走り、これを3回ほどやりましたが、さすがに疲れ、もう我慢して走ってしまえという事になりました。
しかし振動は強烈で、15分も走ると頭がくらくら、ひざはがくがくでとても耐えられません。かといって草を抜いてしまうとタイヤがリムからずれて走るのは無理です。

仕方なく二人交代でひたすら家を目指し走りました。やっと人里に下りた頃にはすっかり日が暮れ、二人とも無言で、走ったり、押して歩いたりして、家に着いたときには日付が変わっていました。

DTはスポークが3本切れ、タイヤは勿論おシャカです。ひどい目にあいましたが、今となっては楽しい思い出です。
それにしても、雑誌のあの記事を書いた人は自分で試した事あるのかな。
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