南雲 鉄雄 |
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Kawasaki |
H2SX SE+ |
総合評価 : 90 点 |
年 式 |
2019 年 |
走行距離 |
5,000 km |
燃 費 |
街乗り |
16〜20 km/リッター |
ツーリング |
20〜23 km/リッター |
長所 |
身長180cm体重90kgでのインプレとなります。
使用用途はほぼツーリングのみです。
文章内でのH2SX SEは SE
H2SX SE+は SE+ と表記します。
また、文章内での比較対象として出てくるH2SX SEは2018年モデルです。
昨年華々しくデビューしたSEだが二年目にていきなりまさかの電子制御サスペンション(以下電サスと表記)が装備されたSE+が発表。
一度、電サスのバイクに乗ってみたいと思ってはいたが、SEの方の車体カラーが好きなので小一時間程悩んだが電サスの誘惑に勝てず購入を決意。
1.足着きが良い
- ハイシートでも両足のかかとがべったり着いて膝がやや曲がる位。
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- SEと足つきは大差ないが、心もち足つきが悪く腰高な感じがする。
- 足つきの良い分走行中はやや膝の曲がりが窮屈に感じるが踏ん張りも自然に効くし慣れればそう悪くないポジションです。
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- ハンドル位置も個人的にはこのくらいかもう少し低い方が長距離を走っても腰が楽(私の場合上体が立ちすぎると腰に負担が来る)です。
2.長距離ツーリングで疲れにくい
- ツーリング時にはインテグレイテッドライディングモードを「ROAD」か「RAIN」にしておけば柔らかめのサスペンションも相まって走りやすい。
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- また、クルーズコントロールは手で常にアクセルを開けていなくて良いという事が長距離ではこんなに楽なのかと歓心。
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- クラッチは軽い部類に入ると思いますがKQSを使用すると更に楽です。
3.パニアが純正で付けられる
- パニアが付けられるのはこのバイクを購入した大きな理由の一つです。
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- 欲を言えばもう少し容量が大きければより良いのですが、少なくともヘルメットは入るし、一升瓶も入るので安心です(意味不明)。
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- 関係ないですが、VERSYS-X 250TOURERのパニアにも一升瓶が入り安心(意味不明)。
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- 私は近場でもツーリングの時はパニアを付けています。長物以外のお土産等を気軽に買えるので便利です。
4.普段使いでも走りやすい
- 取回しはツアラークラスでは軽量とは言えやはりそれなりですが、一旦走り出すと分厚いトルクと低〜中回転域では案外素直なエンジン特性も相まって低速から高速までストレス無く走れます。
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- 発進時に低回転ではガラガラと鳴るエンジン音で「エンジン止まるんじゃないの」と聴覚的にトルクが薄く感じますが実際はそんな事はないです。
5.一目見てH2シリーズと判るスタイリング
6.なんといってもスーパーチャージャー!!
- 馬力や加速と燃費を高次元でバランスさせた「バランス型スーパーチャージャーエンジン」は名作と言えるでしょう。
- 大人しく走れば排気量と馬力の割りに燃費も良いし、その気になれば脳みそを落っことしそうな強烈な加速も味わえます。
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- 吸気音もヒュイィィィーンと独特、ブローのピュルルルル〜♪も独特。
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- 今現在市販のスパーチャージャーエンジンはH2シリーズだけです(2019年7月時点)。
- これに乗れる喜びも価値の一つですね。
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短所 |
1.熱い
- 個人的感覚ではZZR-1100のC型よりは熱くないと思います。
- 空冷のスーパーチャージャーである事を鑑みるによくこれだけで済んでるなと関心します。
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- しかし、ZX-14Rや1400GTRに比して明らかに熱いのは否めません。
- これはスーパーチャージャーの熱を逃がす事が最優先だからだと思われます。
- トレリスフレームもその為に採用したとも聴きました。
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- 夏はメッシュパンツだと熱がもろに肌にあたるのでロングタイプのアンダーパンツを履く方が良いでしょう。
サマージーンズタイプのメッシュでないライディングパンツだと我慢できない程の熱さではないです。
2.走行時の汚れが酷い
- 1に関連しますが、どうもスーパーチャージャーの熱を逃がす事が最優先のカウル形状なのか、雨天時等に走ると砂や泥がカウル内にバンバン入ってきます。
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- フロントカウルの内側が泥や砂まみれになるので洗車が少々面倒です。
- ZZR1200ではこんな事は有りませんでした。
3.航続距離が短い
- ツアラーとしては少し燃料タンク容量が少ない(19L)。
- 大人しく走ると20km/l前後の燃費ですが、せめてあと3L、航続距離で400kmは安心して走れるタンク容量が欲しいところです。
4.シート下のスペースがない
- SEではフロントシート下のバッテリー周辺に多少スペースがあり、パンク修理キット位は何とか入れられたがSE+ではそのスペースにリアサスペンションのプリロード用モーターが積載されている為全く何も載らない。
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- リアシート下に車検証と自賠責保険証と純正車載工具が入る程度、ETC機器もここに入っています。
5.フルカウルツアラーとしてはウインドプロテクトにやや難有り
- デザイン重視で防風の範囲がやや狭い。それよりも高速で走っていると風が巻くのが良くない、そのせいで高速だと身体が左右にぶれて、慣れないと少し怖い位。
- これは形状が一緒のSEも同様でした。
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- ZX-14Rよりはプロテクション性は高いが、ZZR1200よりはかなり低い。
- 勿論あくまでも「フルカウルツアラーとしては」なので誤解なき様。
- 現在ウインドスクリーンの交換を検討中。
6.バッテリー容量がやや不足なのでは?
- アクセサリー用にシガーソケットが付いていますが、シガーソケットからカメラの電源を取って、ナビもつけるとたまにセルの回りが極端に弱くなり、エンジンがかからない事がありました。
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- 何も着けていなくても、セルモーターの回り方が少し弱いと思っていましたがバイクにつける電子アクセサリーも多々有る今日、もう少しバッテリー容量が欲しいところです。
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- エンジンがかかっていさえすればナビの画面が消えるなどの不具合はありません。
7.低回転時のエンジン音
- 特にアイドリング時は上質さの欠片も無い。
- 多分初めて乗るとベアリングでも割れてるのか? と感じると思う。
- これでもH2よりは静からしい。
※【信号待ちで隣に並んだ他の国産メーカーのバイクさんへお願い】
- 大丈夫です、是で正常なんです、壊れてなんか居ません、いつもこうなんです。
- 気にかけていただき有難う御座います。
- …だからこっち見ないでください(恥)
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- 但し3000回転あたりから次第にスムーズな音となり、4000回転からはモーターの様
- にシルキーなフィーリングになる。
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故障,トラブル |
●取扱説明書に関して
- バイク本体ではないですが取扱説明書がすこーし分り辛い。
- 誤解を招く表記や説明不足な点が多々有り、コールセンターに聞いても分らないと言われ、結局自分で実際に色々試して解決している最中です。
- 例えばOil Changeの数値を変更するには一度この機能をoffにして再度onにしてからでないと変更出来ないなど、取説には一切書かれておらず苦労しました。
- その他言い出すと切りがないが、今後改善を期待したいところです(2019年7月時点)。
●パニア取付けに関して
- SEで使っていたサイドパニアをそのまま使用していますが、一台目と二台目のSEの時はかっちりと取付けられたのにSE+では手で軽く触る程度でガタガタ音がするくらいガタがある。
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- バイク屋さんが追加でスペーサーを足してくれて治まりました。
- サービスで施工していただき感謝してます。
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- 公差かもしれませんが、「カワサキか…」と思った瞬間でした。
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それ以外は今のところなし、ヘッドライト光軸のリコールも私の車体は対象外でした。
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その他 |
●サイドスタンドに関して
- サイドスタンドで駐車すると車体の立ちが強いため右側が低い場所には倒れそうで駐車し辛い。
- もう少しだけサイドスタンドが短ければ良い気もするが、そうするとフル装備のフル積載だと車体を起こすのに苦労するかも。
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- 幸い実際に倒れたことはないが、駐車場所に気を遣う。
●タイヤに関して
- 標準でブリジストンのS21が装着されています。
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- 基本的に悪くは無いのですが、5000km前後でタイヤの真中だけ「残ります」
- 極端に言うと富士山みたいな形になります。
- こうなるとコーナーでの挙動が怖いので溝はまだまだ残っていましたが交換しました。
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- ミシュランのROAD5GT(重量車用)がこの春(2019年)急遽発売されたので興味があり装着しましたが、フロントのグリップ感が希薄な感じです。
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- 素材自体はROAD5から変更無い様なので、カーカスの剛性が高すぎてタイヤが潰れない為本来ならば有る、変形にともなうグリップが得られないのだと思われます。
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- SEの時にROAD5を装着して、直進安定性、バンキング性能、グリップ感のどれもかなり良かったので、H2SXシリーズにはGTではなく通常のROAD5の方が合っていると思われます。
●インテグレイテッドライディングモードについて。
- SE+ではパワー、トラクションコントロール、サスセッティングが1セットで変更出来ます。
- 基本は「SPORT」「ROAD」「RAIN」の3モードです。
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- これらはそれぞれ予め設定値が決まっており、プリロード以外の数値を個別に変更出来ません。
- 例えば「SPORT」…フルパワー、トラクションコントロール1、サスはHARDの設定
- 各モードの違いは乗ってみると鮮明です。
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- 「SPORT」だとサスも固く、立ち気味で、操作に対してクイックに反応します。
- 「ROAD」は操作に対して過敏すぎず中庸で、ツーリングには最適です。
- 「RAIN」はアクセル開度に比してパワー出力が優しく、名前通り雨天時に最適ですが、意外に峠を走るときにもアクセルに神経を使わないで済むので楽です。
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- モード内の各項目を個別にセッティングしたい場合は「RIDER」モードでの変更となります。
●電子制御サスペンションについて
- 肝心の電サスですが、私が鈍いのか通常のサスとの違いが今一わからず…
- 各モードのセッティングの違いは判るのですが、走行中の作動時本当に電サスとして作動してるのかが体感出来ないです。
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- 電サスを体感するにはストロークが短いからかも。
- 「まるで空飛ぶ魔法の絨毯、段差でも平地を走ってるみたい」とかはないです。
- 段差があればやはり上下に揺れますし。
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- これに関しては私が変に期待しすぎており、少しがっかりしました。
- VERSYS 1000SEではかなり実感出来るとはkawasakiの中の人談。
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- SEは超高速でのタンデムツーリングを視野に入れており、かなり固めのサスでした。
- 荷重のかかる高速域では良いものの、荷重の抜ける低速域ではかなりゴツゴツとした乗り心地でした。
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- 比してSE+のサスは柔らかめで乗り心地は良いです。なのに低速から高速まで破綻無く走れる事と、長距離を走るとSEよりも疲労が少ない事実を鑑みるに、電サスとしての仕事はしっかりしているのだと思います。
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- サスセッティングの楽しみと言う点ではSEが面白いですが、サスセッティングが苦手の方にはSE+の電サスは良い装備だと思います。
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- SE+二採用されているセミアクティブの電サスはサス設定が「SOFT」状態だとしても全域でずっと柔らかいわけでありません
- 。
- 基本が「SOFT」なのであって、速度を上げた時やサスが急にストロークするとちゃんと状況に応じて固くしたり柔らかくしたりして踏ん張ってくれるので、コースと違い刻一刻と路面状況の変わるツーリングでは心強い装備と言えるでしょう。
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- ですが電サスは未だ過渡期の技術です。対応できる状況には限度があります。
- 今後更に路面変化へのタイムロスが減り、アクティブサスへと進化するかと思うとワクワクしますね。
●ブレンボブレーキキャリパーについて
- SE+ではブレンボのキャリパーが付いていますが、個人的にはあまりタッチが好きでは有りません。なんか空気を噛んでるというかスポンジーなタッチです。
- 勿論、握れば握っただけしっかり効くし、コントロールし易いのですが、初期タッチが柔すぎる感じです。
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- SEの方がまだかっちり感が有りました。
- これはブレンボだからというよりはSE+の設定の問題なのでしょう。
- Z1000 R EDITIONのブレンボブレーキは初期タッチがかっちりしてて好きです。
●トップケース装着について
- フルパニアのツアラーって格好イイと思うのは私だけ?
- 出来ればオプションでトップケースもラインナップして欲しかった。
- VERSYS 1000の様に純正でトップケースも付けられると良いのですが…
- シート上への積載性は意外と良いのでソロでトップケースまでは要らないという方には問題ないとは思います。
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- 私はフルパニア化の為にGIVIのH2SX用トップケースステーを付けました。
- トップケースを付けてない時はステーが目立って少し間延びしたスタイリングになりますね。
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- 国内にこのステーが入ってきていないのは国内仕様のH2SXシリーズにはメットホルダーが付いており(海外仕様は付いていない)これを取り外す必要があるからだと思います。メットホルダーはワンウェイネジで取付けられているため取外す
- のが困難です。
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- 逆を言えばこれさえクリアーできればGIVIのH2SX用トップケースステーは取付け可能で、サイドパニアも問題なく着脱出来ますので参考まで。
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- フルパニアだと長期ツーリングやキャンプでも荷物が楽に積めます。
- 但し、トップケースの分面積が増えるので横風には多少弱くなります。
- 高速を含め、普段走る分には問題ないですが横風が強い時は注意が必要です。
●スマホとの接続に関して
- Rideologyを使ってはいるが、正直あまり恩恵は感じない。
- 一番楽しみにしてた走行ログはスマホの性能が低いのも有るのか通った道通りに 表示されず、瞬間移動したりする。
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- 「大体この辺りを走った」という目安程度でしかない。
- コースを走る人なら時間経過と共にギア、回転数、ブレーキ圧力等々が表示されるので参考になると思う。
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- また、スマホでセッティングを変えられるのだが、バイクのイグニッションキー をONにしていないと変更可能は一部のみで、全ての項目のセッティングが出来ない。
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- バイクを降りている時にじっくりと設定を見直し、それをロードするという使い 方をしたいのだが、それが出来ないのであまり意味がない。
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- 今後変更や改良され熟成されるのを期待したい。
●その他 H2SX SEとのソフト的な相違点
- パネル表示(位置や内容)と操作方法が一部変更された
慣れるまでH2SX SEとごっちゃになり軽く困惑しました。
- クルーズコントロールの最低速度が5km/h下がり3速35km/hから使用可能
たった5km/hですが、高速道での渋滞時に地味に便利になりました。
- また、クルーズコントロールセット時の感覚がかなり自然になった
SEはセット時に加速する様な感覚があったのがSE+ではかなり解消された。
- 平均燃費の計算プログラムがアップデートされほぼ実燃費に近くなった
SEは信号停車時に一気に下がったりと、かなり乖離がありました。
- KQSのプログラムがアップデートされた
低いギアでの変速時に、過大なエンブレがかかる事があったがほぼ解消された。
kawasakiに確認した所H2SX SE+はH2SX SEのグレード違いではなく、別機種の扱いなのだとか。よってサービスマニュアルもH2SXの補足版ではなく、完全に別冊子と
なっています…どちらも電話帳並みに分厚いです。
但し、サービスマニュアル表紙の機種名はどちらもH2SXなのでぱっと見区別がつきません。
●結論
- 色々書き(過ぎ)ましたが、バイクは結局のところ趣味のものです。
- 個人的には一目惚れで購入するのが最高の買い方だと思っています。
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- 好きで買えば多少の短所は工夫で乗り切り、痘痕も笑窪の言葉通りとなるでしょう。
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- 例えばカワサキ乗りの「カワサキか…」は自虐もありますが馬鹿な子ほど可愛いと
- いう愛情表現でもあると思います。
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- まぁ、最近のカワサキ車は昔ほど「カワサキか…」という部分はないですが。
- それが少し寂しいと感じる私は変態か…。
それでも敢えてH2SX SE+はどんな人にお勧め? と聞かれれば
- 長距離ツーリングがメインで
- 有る程度の荷物がスマートに載せられて
- タンデムも出来る
- スーパーチャージャーのバイクが欲しい!!
- ついでに「カワサキか…」を楽しめる
そんな人にお勧め致します。
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