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ドン・キホーテと海上(かいしょ)の森

さんちゃん

いきなりこのタイトルだけでは「何の事だ?」とお思いでしょう。これは愛知県・名古屋テレビが放送している「Let's ドン・キホーテ」という番組に由来して付けさせて頂きました。

俳優の中本賢さん以下四人のメンバーが、毎週名古屋を中心とした東海・中部近郊で様々なアウトドアの遊びを通して、自然と人との共生をテーマとして活動している番組です。

この「Let's ドン・キホーテ」がしばしば取り上げるのが、愛知県瀬戸市にある「海上(かいしょ)の森」。ここは2005年に予定されている愛知万博の会場として候補地に挙げられた所で、以来賛成・反対両者の論争の的ともなっています。

最近では絶滅が危惧される「オオカタ」の巣があるとか、BIEという、言わば万博の元締めが計画案に否定的であるとかの報道もあり、そういう意味では全国区の知名度も得つつあるのではないかと思います。

私自身はアウトドアでの遊びなどの経験が殆どない上に、知識もなければ、そもそもそういうこと自体が余り好きではないと思っていました。でもこの「Let's ドン・キホーテ」を時々見る内に、しばしば番組の舞台となる海上の森とはどのような所なのかと興味が湧き、一度たずねてみる事にしました。

海上の森は瀬戸市の東側、豊田市に展開する猿投(さなげ)山に連なる猿投丘陵地に属します。古くは猿投古窯群遺跡が数多く出土し、「瀬戸物」の産地として如何にも相応しく、ここ海上の森にも多数の窯跡が残っています。背後にそびえるのは「物見山」。かつて武田信玄が望楼を建て、尾張地区を監視していたと言われる由緒ある所です。

この海上の森全体は、今となっては殆ど人の手が入っていないかのような、まさに「里山」といった佇まいであり、名古屋という大都会に程近いにもかかわらず、このような里山が身近に残っていた事に、少なからず驚きと同時に安堵感にも似た嬉しさ、子供の頃に見た原風景に巡り会ったような懐かしさも覚えたものです。

今でこそこの森に住む人は少なくなったものの、かつてはそれなりに人家もあったところですから、そこここに電柱が立っていたり、斜面をコンクリートで補修してあったりする部分もあるのですが、それとて長い年月を経たものであり、苔生したり雑草に覆われたりしていれば、現代人の感覚としてはそれを「手付かずの自然」と思う事に違和感はないのではないかとさえ思われます。

当然ながらの未舗装の林道を進むと、上高地の大正池にそっくりな池が現れます。いわく「海上・大正池」。決定的な違いは池のサイズがうんと小さく水の流れも殆どない事と観光客の少なさでしょうか。でも立ち枯れた木立が静寂の中に佇む風情は、つい時間の流れすら忘れてしまいそうです。

こうした豊かな自然と言って良い環境は今や非常に得がたく、環境保護に熱心ではない私をして「残しておきたい」と思うのは、それこそが自然な事なのかもしれません。
しかし愛知県はこの海上の森で万博を開催しようとしています。しかも万博終了後には「一部」と言いながら相当の面積で宅地化する計画が示されています。

勘違いして頂きたくないのですが、私は現時点では万博反対を声高に叫んでいるわけではありませんし、皆さんにも万博反対派に回って頂きたいと思っているのでもありません。万博には万博なりの意義と効果もあるのだろうと思ってもいます。ただ、こうして現地に行ってこの森にじかに触れてみると、万博が賛成とか反対とか言う以前に、これを、こうしたものを残していかないと言うのなら、一体自然保護とか環境の保護とは何を指して言っているのだろうとは思うのです。

皆さんが郊外に出かけて目にする山々に林立する樹木は、その全てが杉林と言っても過言ではないでしょう。あれはつまり人の手によって造られた林であり森であるわけです。海上の森と言っても一部にはそうした造林が為された所も見受けられますが、多くは広葉樹と針葉樹が混在する雑木林であり、一見何気なく見過ごしてしまいそうな雑木林が、今この国には殆ど残っていないという事実があります。

私は、この海上の森は残しておきたいと思いました。

具体的な場所をお教えしたいのですが、各種報道により多くの耳目を集めるに従い、やはり海上の森全体に人の立ち入りが増えて、踏み固められる部分が多くなるにつれ山野草の自生面積の減少、鳥の分布減少などが始まっています。海上・大正池では特に水際の砂地の減少や水質汚濁も進んでしまったという事ですから、興味のある方は、勝手ながらご自分で場所は探してください。

ある意味美しい、心安らぐ森での一日が体験できると思います。
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